予防獣医療・その他

避妊手術・去勢手術

交配、繁殖を行う予定がない場合、避妊・去勢手術をおすすめします。
避妊・去勢手術は、繁殖コントロール効果や行動・性格面での効果のみではなく下記の様な健康面での効果もあり、一般に避妊・去勢手術を受けた場合は、受けていない場合に比べると病気も少なく、長生きする傾向にあるとされています。

◆メリット
【健康面での効果】 性ホルモン異常に関連する病気が予防できる。
【行動・性格面での効果】 生後半年~1年以内のほうが効果がでやすい。

  健康面での効果 行動・性格面での効果
雄犬 精巣腫瘍、前立腺疾患、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニア等の予防になる。 攻撃性の低下、性格が穏やかになり、しつけもしやすくなる。尿のマーキングが減る。
雌犬 望まない妊娠を防ぐことができる。子宮蓄膿症、卵巣腫瘍、乳腺腫瘍、鼠径ヘルニア等の予防になる。 発情の煩わしさが解消される。(発情時の出血がなくなる、雄犬がよってこなくなる、など)
雄猫 精巣などの腫瘍の予防になる。
外出や他の猫とのケンカが少なくなることで、外傷・ケガが減り、猫白血病ウイルス感染症、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)に感染する可能性が低下する。
攻撃性の低下、性格が穏やかになり、しつけもしやすくなる。
尿のマーキングが減る。(部屋のあちこちの、壁など垂直なものに尿を吹き付ける行為をスプレーと呼んでいますが、80~90%の雄猫に対して防止する効果があります。)
雌猫 望まない妊娠を防ぐことができる。子宮蓄膿症、卵巣腫瘍、乳腺腫瘍などの予防になる。
外出や他の猫とのケンカが少なくなることで、外傷・ケガが減り、猫白血病ウイルス感染症、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)に感染する可能性が低下する。
発情の煩わしさが解消される。(発情時の異常な鳴き声がなくなる、など)子猫の時期の幼い性格が維持される。

◆デメリット
◇手術費用がかかる
(雄犬13,500円、雌犬23,500円、雄猫9,500円、雌猫18,500円、すべて外税・体重15kgまでの場合)
◇太りやすくなる場合がある。
(すべての施術例が必ずなるというものでもありません。またそうなった場合でも、給餌量をコントロールしたり、食事内容を検討することで肥満は防止できます。避妊手術後や去勢手術後用に調製されたフードも当院で取り扱っています。)
◇手術のリスク、危険性がある(下記ご参照下さい)。

雄、雌ともに少しでも若いうちに手術をしたほうが上記効果がより高くなるといわれています(手術は2ヵ月齢時より可能。一般的には4~6ヵ月齢時での施術が多い)。
それ以上の年齢となってしまった場合でも、若ければ若いほど手術リスクは低くなります。特に病気になってしまってからの手術はリスクが高くなりますので、健康な若齢のうちに手術を済まされることをおすすめします。
雌の場合、一度子犬、子猫を産ませてから、あるいは一度生理が来てから手術をしたほうがいいというのは根拠がありません。
獣医学的なデータとしては以下のものがあります。

●犬の乳腺腫瘍に関しては、その発生と避妊手術の実施時期との間には密接な関連があります。
1回も発情を経験しないうちに避妊手術した犬の乳腺腫瘍の発生危険率は0.5%
1回のみ発情を経験したあとで避妊手術した犬の乳腺腫瘍の発生危険率は8%
2回以上発情を経験したあとで避妊手術した犬の乳腺腫瘍の発生危険率は26%
2.5歳以後に避妊手術をした犬の乳腺腫瘍の発生危険率は40%(1969 SCHNEIDERら)
●猫の乳腺腫瘍に関しては、卵巣未摘出の猫は卵巣摘出済(避妊手術済)の猫に比べて発生率が7倍高いというデータがあります。

わんちゃんの乳腺腫瘍です。
わんちゃんの乳腺腫瘍です。
子宮内に膿がたまり、破裂寸前です。命に関わる疾患で、かつ発生率も高いです。
わんちゃんの子宮蓄膿症です。子宮内に膿がたまり、破裂寸前です。命に関わる疾患で、かつ発生率も高いです。

雄の精巣が正常の位置にない場合、おなかの中にあることがあります。
このような場合を潜在精巣(陰睾)と呼びますが、正常の精巣に比べ、腫瘍化しやすいといわれています(潜在精巣における腫瘍の発生率は正常な精巣に比べ9倍)。
腹腔内で腫瘍化した場合、発見が遅れることが多く、気付いた時には手遅れということもあります。


避妊・去勢手術をするのはかわいそう、自然にまかせた方がいい、などの考え方があるのは事実です。
しかしながら、わんちゃん・ねこちゃんを家族の一員として考え、長く健康に過ごして欲しいと思うのも飼い主様のお気持ちだと思います。
繁殖に関わる予定のない場合は、正しい情報を踏まえた上で、手術を済ましておくかどうかご検討いただければと思います。

縫合糸反応性肉芽腫への対応について
近年、手術時に使用した縫合糸(特に絹糸)が体内に残存することに起因する「縫合糸反応性肉芽腫」という病気が多く報告されるようになりました。
「異物反応性肉芽腫」「無菌性結節性脂肪織炎」「無菌性肉芽腫症候群」などと呼称される場合もあります。

どの個体にも起こりうる病気ですが、ミニチュアダックスフンドでの発生率が最も高いといわれています。その他、チワワ、コーギー、シーズー、トイプードル、マルチーズ、シェルティー、パピヨン、ポメラニアン、ミニチュアピンシャー、ラブラドールレトリバー、パグなども好発種とされています。また、Mixの子でも報告があることから、純血種のみに起こるわけでもないようです。

一般的な去勢・避妊手術では精巣、卵巣、子宮などの血管を縫合糸で結紮し、生殖器系臓器を摘出します。個体によっては、この縫合糸に対する過剰な異物(免疫、アレルギー)反応が起きてしまうことがあり、数ヵ月から数年後に手術部位やその他全く関係のない部位に瘻管(ろうかん)が生じ膿状の液体の滲出がみられたり、大きく腫れてきたりします。
さらには、お腹の中に大きなしこり(肉芽腫)が生じ、腸管や尿管等を巻き込み腸閉塞や腎不全を起こしたりすることもあります。
もしこのような症状が出たら、再手術で縫合糸を摘出したり、また、摘出が不可能なほど癒着している場合や何らかの理由で外科処置が不可能な場合などは、ステロイドや免疫抑制剤によるコントロールが必要となります。
この投薬はほとんどの場合生涯の治療となります。

この病気が発症する可能性があるかどうかを事前予測することは現在の獣医学ではできませんが、体内に「糸」をなるべく残さない手術を行うことで、「予防」することはできます。

このような理由から、当院では2005年から絹糸の利用を一切中止し、基本的に体内では人工吸収性縫合糸(体内でいずれ分解・吸収される糸)のみ利用することといたしました。さらにその後、人工吸収性縫合糸による縫合糸反応性肉芽腫の報告もなされたことから、2009年からはLigaSureSystem(リガシュアベッセルシーリングシステム)を導入しています。

縫合糸反応性肉芽腫への対応について
縫合糸反応性肉芽腫への対応について
縫合糸反応性肉芽腫への対応について

これは、いわゆる血管シーリングシステムと呼ばれるもので、最大7mmまでの血管を糸を使用せずに確実にシーリングすることができる手術機器です。シーリング部位は900血圧まで耐えることができますので、縫合糸による結紮と変わらない程度の血圧まで耐えることができます。これで糸は使わなくても非常に安全に手術を行うことができるようになりました。
手術時間も短縮できますので、麻酔の負担も軽くできるのも利点といえます。

※当院では他のすべての手術においても適応箇所にはなるべく縫合糸結紮や血管クリップよりもシーリングシステムや電気メス止血、レーザーメス止血を使用するようにしております。また、それらの使用による追加料金は頂いておりません。

◆手術のリスクについて
一般的には避妊・去勢手術は安全な手術とされていますが、残念ながら100%安全とも言えないのが現実です。
術創が少し化膿したというような軽度な(治療により完治する)合併症から、重度な(後遺症、死亡等も含めた)合併症までの報告があります。

2001年3月(当院開院)から2011年8月まで、10年半ほどの期間の当院における避妊・去勢手術数を集計したところ、1448頭の施術記録がありました。
この間における、外見上健康と思われた犬や猫での避妊・去勢手術における当院での重度な合併症の事例としては、

●2002年(1歳齢・アビシニアン):麻酔開始5分後の突然の心停止→蘇生処置により回復したものの、虚血性脳障害によるものと思われる失明が後遺症として残存(参考http://merckmanual.jp/mmpej/sec06/ch064/ch064d.html)。幸いにも、飼育場所の整理整頓、食器やトイレの場所を固定化することで、自宅で通常の生活を送ることが可能であった。麻酔薬等の用量や手技手順を見直したが問題もなく、心停止の原因は基本的に不明であった。先天性甲状腺機能低下症や心筋症等の潜在疾患も疑ったものの、検査を実施していないのでそれらの関与についても不明であった。
本事例を受けて、当院では、手術前検査(血球計算、血液生化学検査、血液凝固系検査、心電図検査、レントゲン検査、エコー検査等)の実施を飼い主様にご提案するようになりました。

●2003年(年齢不明・雑種猫・妊娠末期):術後の麻酔の覚醒過程も通常どおりであったが、手術終了約3時間後、突然の呼吸停止と心停止。蘇生処置の甲斐なく死亡。麻酔薬等の用量や手技手順を見直したが問題もなく、心停止の原因は基本的に不明であった。妊娠末期の避妊手術は通常の手術よりもリスクは上がると思われることから、その関与も疑われた。心筋症等の潜在疾患も疑ったものの、検査を実施していないのでその関与は不明であった。

●2011年(年齢不明・雑種猫):術後の麻酔の覚醒過程も通常どおりでであったが、手術終了約2時間後、突然の呼吸停止。人工呼吸下にて管理を行ったが、術後9時間後に心停止。蘇生処置の甲斐なく死亡。麻酔薬等の用量や手技手順を見直したが問題はなかった。人工呼吸下における管理中に各種検査を実施したところ、肥大型心筋症が確認された。推察ではあるが、周術期の循環動態の変化に伴って、心筋症によって生じた血栓が脳等に転位し呼吸停止を引き起こしたものと考えた。最終的に心筋症、肺動脈血栓症、あるいは虚血性脳障害等により心停止にいたったものと推察された。

これらの事例は手術前検査はせずにあくまで健康体であろうということを前提に麻酔、手術を行うことに同意いただいた症例でした。結果的に手術前検査をしておけば手術リスク度の修正、ご相談の結果によっては手術中止、ができた可能性がありました。
その他、他院での発生事例として、術後に血栓が前後肢に発生、壊死したため断脚を余儀なくされたケースや、腎臓に血栓もしくは還流不全が発生し、腎不全に陥ったケース、術後数週間後にFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症して死亡した猫ちゃんのケース(周術期ストレスが発症に関与?)などが報告されています(個人的見聞)。

確率的な面から言えば、外見上健康と思われた場合に手術前検査をしても、特に大きな異常が検出されない場合がほとんどです。また、どんなに検査をし尽くしても現在の獣医療レベルでは予見できないリスクが存在することと、人間が携わることなので人為的なミスも可能性として100%排除できないといったリスクが存在します。
つまりはどんなに検査を重ねても100%の安全が担保されるものでもなく、また、外見上健康であれば、重度な合併症を伴う確率は少ない(約10年間の当院成績で言えば重度合併症が起きてしまう確率は3/1448×100≒0.2%、安全性としては100-0.2=99.8%)とも言えます。
安全性99.8%とはいっても100%ではないため、これを安全な手術ととるかどうかは意見が分かれるところかと思われますが、手術前検査費用は手術費用とは別途に飼い主様にご負担をお願いすることになるため、飼い主様によっては確率的な安全性から手術前検査を希望されないケースも散見されます。

しかしながら、当院での事例のように、手術前検査をすることによって防げた重度合併症の例が実在することはいくら確率が低いことでも見逃すことのできない実例であり、実際そのようなことが起こってしまった際には飼い主様としても病院スタッフとしても非常に大きな後悔の残る結果となってしまいます。
手術前検査によって手術リスク度がより正確に把握できる可能性や、検査結果によって使用薬物を適宜変更しリスク軽減に努めることができるといった可能性があることには異論はなく、そのような積み重ねによってより安全性が高まることに間違いはありません。

最終的には手術の是非、検査の是非については飼い主様のご判断に委ねる形となりますが、当院では、より正確な情報をもとに飼い主様にご判断をいただきたく思い、このようなネガティブな情報も公開することにいたしました。
これから避妊、去勢手術をお考えの飼い主様の参考になれば幸いです。

犬、猫に必要な3大予防・・・予防接種&フィラリア予防&ノミ・ダニ予防

犬、猫に必要な3大予防・・・予防接種&フィラリア予防&ノミ・ダニ予防 わんちゃん、ねこちゃんを飼われたら、予防接種(混合ワクチン&狂犬病ワクチン)、フィラリア予防、ノミ・ダニ予防の3大予防をおすすめします。 ◆混合ワクチン(犬、猫) ◇ワクチンの働き ワクチンとは、各種感染症の病原体の病原性を弱めた抗原のことです。ワクチン接種すると、ワクチン抗原に対抗するための抗体が体内で作られます。事前にワクチン接種しておくことで、本物の強い病原性をもつ病原体が体の中に入ってきてもその抗体で病原体を退治することができるようになります。 混合ワクチンに含まれる病気は、一度発症してしまうと命に関わる病気も多く、予防対策のワクチン接種は必要不可欠です。お散歩や外出する予定のペットはもちろん、室内飼育の場合も空気感染を起こす病原体がありますので、混合ワクチン接種は必要です。 ◇混合ワクチンの接種時期 生後まもない子犬、子猫の場合、生後6~8週齢が初回の混合ワクチン接種時期となります。その後、3~4週間おきに複数回の接種を行います。月齢や接種歴によってご提案するワクチンプログラムに若干の違いが生じます。個々のわんちゃんやねこちゃんにあわせて最適なワクチンプログラムをご提案いたします。幼齢期のワクチン接種の後は1年に1回の追加接種となります。 子犬、子猫の母乳を飲んでいる時期は、親からもらう移行抗体(免疫)により、守られています。 この移行抗体はいろいろな病気に対して免疫力を発揮しますが、生後8~14週でなくなってしまいます。そこで、この移行抗体がなくなる頃に備えてワクチンの接種を行います。 ただし、移行抗体が多量に残っている間は、ワクチン接種しても自己抗体が十分作られません。 以上のことから子犬や子猫の場合は、混合ワクチン接種を複数回行って確実な免疫を獲得できるようにワクチンプログラムを考慮します。 また、混合ワクチンの抗体は1年で感染防御可能レベル以下まで減少することが多いとされており、2年目以降も年1回の混合ワクチン継続接種が必要です。(現在は抗体価測定をして、その結果をもとに混合ワクチンの継続接種が必要かどうか判断する方法もあります。) ◇混合ワクチンの種類 犬のワクチンは、5~9種、猫のワクチンは3~7種までの感染症に対する混合ワクチンがあります。 ペットの生活の環境や、飼育の方法などにより、異なりますので、どのワクチンが最適かは獣医師へご相談下さい。

*犬*

予防できる感染症 5種混合
ワクチン
6種混合
ワクチン
8種混合
ワクチン
9種混合
ワクチン
犬ジステンパーウイルス感染症
犬パルボウイルス感染症
犬伝染性肝炎
犬アデノウイルス2型感染症
犬パラインフルエンザウイルス感染症
犬コロナウイルス感染症 -
犬レプトスピラ病カニコーラ型 - -
犬レプトスピラ病カニコーラ型 - -
犬レプストピラ病ヘブドマディス型 - - -


*猫*

予防できる感染症 3種混合
ワクチン
4種混合
ワクチン
5種混合
ワクチン
7種混合
ワクチン(※)
猫ウイルス性鼻気管炎
(猫ヘルペスウイルス感染症)
猫カリシウイルス感染症
猫汎白血球減少症
(猫パルボウイルス感染症)
猫白血病ウイルス感染症 -
クラミジア感染症 - -

(※)7種混合ワクチン・・・猫カリシウイルスには多くのタイプがあり、3種~5種混合ワクチンでは1つのタイプのカリシウイルスの予防しかできませんでしたが、7種混合ワクチンでは3タイプのカリシウイルスを予防することができます。

◇混合ワクチンの副反応
混合ワクチンアレルギーの発生率は1/15000と低い確率ですが、顔がむくむなどの軽い副反応(治療で治ります)から、急激な血圧低下や呼吸困難等を起こし、生命にかかわる危険な状態に陥るアナフィラキシーショックなどの重度な副反応まで様々な副作用が起こる可能性があります。
通常、重度な副反応はワクチン接種後15分から30分以内に発症することが多いので、接種後はペットの様子に気を配ることが大切です。
なんだかいつもと違うな?と感じた時は獣医師にご相談下さい。

残念ながらワクチン接種後にアレルギー反応が出るかどうかを事前に検知することはできません。だからといって副作用を心配して混合ワクチン接種をしないことは基本的に本末転倒とされています。理由は、重度な副作用発生率と病気の発生率を比較すると、病気の発生率の方が格段に高いからです。現在、副作用の発生を抑えるワクチン開発・研究も進行中です。ワクチン接種の意味を正しく理解し、適切な時期に適切なワクチンを接種することが大切と考えます。

◆狂犬病ワクチン(犬)
狂犬病ワクチンとは、日本の法律(狂犬病予防法)で飼育犬に1年に1回の接種が義務付けられているワクチンです。海外では普遍的に発生している致命的な人獣共通感染症で、日本国内にいつ持ち込まれても不思議ではないのが現在の状況です。
当院でいつでも接種が可能ですので、未接種あるいは接種後1年以上経過している場合はご相談下さい。
岐阜県内各市町村行政機関と鑑札・注射済証の交付委託契約をしておりますので、接種後の登録・報告につきましても当院にて正規の事務手続きが完了できます。基本的に飼い主様に行政機関までの御足労をおかけすることはございませんのでご安心下さい。なお、御来院の際には、行政機関からの葉書等あればご持参下さい。事務手続きが簡略化できます。

◆フィラリア予防(犬、猫)
◇フィラリア症とは?
フィラリア症とは、フィラリアという12~30cm位の細長い形をした寄生虫が、蚊を通して犬や猫に感染する病気のことです。
フィラリアは、子どもを産む為に心臓に住むので、血液循環が悪くなり様々な症状を引き起こしてしまいます。
犬の場合は診断が簡単ですが、猫の場合は生前に診断するのが難しいケースがあります。

【症状】
・物が詰まったような咳、ゼーゼーした咳をする
・呼吸が粗い
・疲れやすくなった
・運動を嫌がる
・痩せてきた
・貧血気味になってきた
・腹囲が大きくなってきた(腹水)
・失神することがある
・痙攣発作
・赤いおしっこをする。
・突然死(特に猫)

ほとんどは無症状のうちに病気が進行し、感染から数年経過した後に心臓や肺が限界までダメージを受けて初めて症状が出始めます。症状が出た時にはかなり障害が進んでいて手遅れという場合もあり、死に至ることもある恐ろしい病気ですが、しっかり予防することでほぼ100%予防できます。症状がないから大丈夫!!ではなく、毎年毎月忘れずにしっかりと予防していただくことが大切です。

◇フィラリアの感染経路
フィラリアの感染経路 フィラリアに感染してしまったペットの血液を吸った蚊が、他の犬・猫を刺すことにより感染します。
そして、犬への感染後には、成虫になったフィラリアがたくさんの小虫(ミクロフィラリア)を作ります。
そしてこのミクロフィラリアに感染している血液を吸った蚊が、次の犬・猫を刺すことにより、フィラリアは広がります。感染しているペットがいる限り、フィラリア症はこの世の中から無くなりません。


◇フィラリア予防について
蚊が発生する時期、1ヶ月に1回予防薬を投薬するというのが基本です。(5月~12月まで)
蚊に刺されない事が1番のフィラリア症の予防ですが、それは無理です。
1番の対策は、感染した幼虫を撃退する薬を定期的に使用して予防する事です。
当院では、チュアブル(おやつ)タイプ・錠剤タイプ・粉タイプ・滴下タイプ等をご用意しております。
処方時には、飼い主様とよく相談してペットに負担のない形で処方するようにしています。

<予防期間>
お住まいの地域やその年の気温によっても多少異なりますが、当院周辺地域での通常予防期間は5月~12月(年8回程度)です。具体的には、通常4月末もしくは5月上旬より始め、11月下旬もしくは12月上旬まで毎月1回投薬して下さい。

薬の薬効上、病原体を媒介する蚊の発生1ヶ月後から投薬を始め、蚊がみられなくなった時期の1ヶ月後まで予防薬を投薬することが重要です。9月~10月頃に投薬をやめてしまわれたケース(しかも一部は室内飼い!!)で感染が起きてしまった事例がいくつかありますので、投薬期間には十分ご注意下さい。
お薬の投薬方法もきちんとお伝えしますので、ご不明な点は遠慮なくご相談下さい。


<油断しないで!!>
「蚊取り線香を使っている」、「だいたい家の中にいるから大丈夫」は予防をしなくてもよいといった根拠にはなりません。
至るところに蚊は発生し、ペットは刺されます。フィラリア感染は、その病原体を保有している蚊に刺されるかどうかだけです。運次第といっても過言ではありません。

予防をしないと100%感染するという事ではありませんが、予防薬の正しい投薬で100%に近い確率で予防ができます!

◆ノミ・ダニ予防(犬、猫)
ノミ・ダニ予防(犬・猫)

◇ノミの被害
1.吸血されることによる貧血
2.刺激とかゆみによるストレス
3.ノミの唾液によるアレルギー性皮膚炎
4.瓜実(うりざね)条虫(腸内寄生虫)の媒介。



◇マダニの被害
1.吸血されることによる貧血
2.ダニに咬まれた部位に発生する炎症性肉芽腫
3.ダニの唾液によるアレルギー性皮膚炎
4.さまざまな病気の媒介。
バベシア、ヘモバルトネラ、ヘパトゾーン、ライム病、Q熱、ダニ麻痺、日本紅斑熱、野兎病、etc…(命に関わる病気も含まれており、注意が必要です。) 加えて、最近はSFTS(重症熱性血小板減少症候群、人獣共通感染症)というヒトにもペットにも死亡を含めた重度な症状を引き起こす新しいダニ媒介性感染症も問題となっています。

ノミやマダニは、犬、猫だけでなく私たち人間にも病気を媒介する恐れをもつ寄生虫です。散歩、外出等の際に環境中や感染動物から感染することが多いです。
特にノミはとても小さいので、発見が困難なことも少なくありません。ノミは家の中に入り込み、卵や幼虫の状態で畳のすきまやカーペット、家具の陰などで繁殖を繰り返します。ノミが大量に発生するのは春から秋にかけてですが、暖房の行き届いた屋内では冬でも寄生と繁殖を繰り返します。繁殖が成立した環境中においては、ノミの成虫はわずか5%程度で、卵や幼虫、さなぎ等が95%も存在していると言われています。つまり飼育している動物に5匹のノミを発見したら、飼育環境には成虫予備軍(卵や幼虫、さなぎ)が95匹分も存在しているとお考え下さい。マダニも同じく春から秋にかけて大量に発生しますが、冬でも気候によっては問題となることがあります。したがって、一時的な駆除だけでなく継続した予防が大切です。一般的な推奨予防期間は2月下旬から12月あたりとなりますが、理想としては通年の予防をおすすめします。
 

ノミアレルギー性皮膚炎の症例画像① ノミアレルギー性皮膚炎の症例画像②
ノミアレルギー性皮膚炎です。かなりの痒みを伴います。

 

ノミの糞の症例画像 瓜実条虫の症例画像
ノミの糞です。これを見かけたら、ノミがいると思って下さい。 瓜実条虫です。ノミによってうつされる腸内寄生虫です。感染すると下痢などの腸炎や腸閉塞を引き起こします。


さらにノミ・マダニについての正確な情報はhttps://n-d-f.com/よりご確認下さい。
予防薬投薬日お知らせサービスもあります。

現在、様々なノミ・ダニ対策用の動物用医薬品が認可されております。当院では、それらをペットの種類や年齢、飼い主様のご意向、予算、製剤による効能の違い等を考慮したうえで、最適な製剤をご提案するようにいたしております。
なお、ホームセンターやペットショップ、スーパーマーケットなどで扱っているノミ・ダニ対策製剤の多くは、「動物用医薬部外品」であるため、効果の低いものや効果の持続力が弱いものもあります。動物病院だけで処方される信頼の「動物用医薬品」をおすすめします。 なお、現在はわんちゃん、ねこちゃんともに、フィラリア症予防とノミ・マダニ駆除、お腹の寄生虫等の駆除を1つのお薬でまとめて対策ができるオールインワンタイプのお薬があります。投薬行為自体とスケジュール管理が楽になりますのでおすすめです。

各種予防を一定条件当院にて実施された飼い主様に対し、フィラリア予防薬やノミダニ駆除薬、一般診察料、ペットホテル料金等の割引をする制度も新設しました。各種予防については当院までご相談下さい。

歯石除去

歯石は、歯垢と口腔内の細菌および唾液中のカルシウムなどの成分が固まって形成されます。
歯石が蓄積されたまま歯を放置すると、口臭の原因になるだけでなく、歯肉に刺激を与えて歯肉炎を引き起こし、さらに進行すると歯周炎、歯槽膿漏などの歯周病となります。
歯周病は放置下では進行し続け、最終的に口臭がさらに強くなり、痛みや出血がみられたり、歯が抜け落ちたりします。時にはあごの骨が溶解して折れてしまったり、鼻炎の原因となったり、目の下から膿が噴きだしたり(眼窩下膿瘍)します。さらには歯肉や歯石内で繁殖した細菌によって全身性の感染症に発展する場合があり、難治性の気管支炎、肺炎、心内膜炎、腎炎、肝炎、関節炎、髄膜炎などの重大な病気を引き起こすこともあります。
一度付着してしまった歯石は取れないので、歯磨きやデンタルガムなどによるデンタルケアをしっかり行い、付着してきた歯石は歯周病を起こす前に病院で除去することをおすすめいたします。定期的な処置によって歯周病の進行を防ぎ、口臭を予防できます。

眼窩下膿瘍 (歯根膿瘍)の症例画像 歯根部CT画像
眼窩下膿瘍 (歯根膿瘍)  

重度に蓄積した歯石の症例画像 歯石除去処置(スケーリング)後の画像
重度に蓄積した歯石により、歯周病が見られます。 歯石除去処置(スケーリング)後です。本来の白い歯が見えるようになりました。再付着予防のため、歯表面を研磨し、滑らかにしています(ポリッシング処置)。定期的な処置によって歯周病の進行を防ぎ、口臭を予防できます。
口腔衛生を維持するのに一番効果的なのは、毎日の歯磨きです。子犬、子猫の頃から歯磨きトレーニングを励行しましょう。いきなり歯ブラシからではうまくいかないことが多いので、最初は指に巻いたガーゼでやさしく歯を拭いてあげることから始めてあげて下さい。歯を拭くのになれてきたら、わんちゃん、ねこちゃん用においしく作られた歯磨き粉がありますので、ヘッドが小さく柔らかい歯ブラシ(犬猫用・赤ちゃん用など)を用いて磨いてあげるとよいでしょう。歯茎に歯ブラシの端をかるく当てて、小刻みにこすり洗いをする感覚で細かく動かして下さい。力の入れすぎに気をつけるとともに、何よりも「えらいねぇ~」など、ほめ言葉をかけてあげながら、「楽しい時間だ!」とおもわせることがコツ。


犬のきれいな歯の画像 ガーゼで歯を磨く様子 歯ブラシで歯を磨く様子
いつまでもきれいな歯でいたいですね。 まずはガーゼで磨いてみましょう。 慣れてきたらハブラシだって使えます。

歯磨きの苦手なわんちゃん、ねこちゃんには、歯石の予防効果があるフード、酵素入りおやつ(ガム)、スプレー、ゼリー等がありますので、スタッフにご相談下さい。

ブラッシング効果のあるフード画像
ブラッシング効果のあるフードです。

マイクロチップ

自然災害、迷子、盗難、事故……動物は住所も名前もいえません。
そんな様々なトラブル時にマイクロチップは確実な身元証明になります。
マイクロチップとは・・・
マイクロチップ 専用のリーダー(読取器)
マイクロチップ 専用のリーダー(読取器)

動物の確実で安全な身元証明(個体識別)の方法として、アメリカやヨーロッパをはじめ、世界中で広く使われています。日本でも、近年、犬や猫などのペットを中心として利用者が急増しています。
マイクロチップは、直径約2㎜、長さ約12㎜の円筒形の小さな電子標識器具で、内部はICチップ、コンデンサ、電極コイルからなり、外側は生体適合ガラスで覆われています。
それぞれのチップには、世界でただひとつの個体識別番号が記録されており、この番号を専用のリーダー(読取器)で読み取ることができます。リーダーをマイクロチップに近づけると、リーダーから発信される電波を利用して、データ電波を発信するため、電池が不要で、一度動物の体内に埋め込めば一生交換する必要はありません。
動物愛護管理法では、犬や猫などの動物の所有者は、自分の所有であることを明らかにするために、マイクロチップの装着等を行うべき旨が定められています。
犬や猫を海外から日本に持ち込む場合には、マイクロチップなどで個体識別をしておく必要があります。また、海外に連れて行くときにも、マイクロチップが埋め込まれていないと持ち込めない国があります。

<メリット>
マイクロチップを確認しているイラストマイクロチップを埋込んだ動物とその飼い主様のデータは日本獣医師会等から組織される動物ID普及推進会議(AIPO)のデータベースで管理されています。
迷子等で動物が飼い主様と離ればなれになった場合でも、保護された時点でマイクロチップが入っていれば、読みとった個体識別番号をデータベースの情報と照合することによって即座に飼い主様の電話番号等の検索が可能です。
首輪に装着された名札等は保護時には紛失してしまっている場合が多いのが現状ですが、マイクロチップならより飼い主様のもとに戻ってくる可能性が高くなります。
特に、地震等の大災害の際には、マイクロチップが動物と飼い主様を結び付ける方法として役立つと思います。
※リーダーは、全国の動物保護センターや保健所、動物病院などに配備されています。


<埋め込み、登録について>
埋め込みの方法は、一般的な皮下注射とほとんど変わらないため、鎮静剤や麻酔薬などは通常は必要なく、動物への負担はそれほどありません。処置費用は5千円(登録料込・税別)です。
埋め込まれたマイクロチップは、動物の体の中を移動しないように表面に特殊な加工がされています。安全性についても、さまざまな臨床試験が行われて証明されています。
マイクロチップ埋め込み後は、マイクロチップ番号と飼い主様の名前、住所、連絡先などのデータを、「動物ID普及推進会議(AIPO)」のデータベースに登録します。

災害、迷子、盗難、事故・・・、トラブルはいつ誰の身に起きてもおかしくなく、特に迷子や迷子中の事故は動物病院では日常的に遭遇する事例です。転ばぬ先の杖として、ご検討いただければと思います。

ペットホテル

当院では、飼い主様のご旅行、法事等の際のペットのお預かり・管理入院(ペットホテル)を承っております。
獣医師と動物看護師の管理下にてお世話させていただきます。
原則予約制とさせていただいておりますので、事前にお電話にてお問い合わせ下さい。
また、お気に入りのフードやおやつ、おもちゃや毛布等ございましたら、チェックイン時に合わせてご持参下さい。ペット達もより快適に過ごせるかと思います。
犬、猫以外の動物の場合、ふだん生活しているケージごとお連れいただいたほうが、環境の変化が少なくてよいと思います。
なお、伝染病予防のため、犬、猫、フェレットの場合、混合ワクチン接種済みの有無等を確認させていただきます。

ペットホテル料金一覧(1泊2日の料金)

種類 金額
体重5kg以下の犬 2,500円
体重10kg以下の犬 3,000円
体重15kg以下の犬 3,500円
体重20kg以下の犬 4,000円
体重20kgを超える犬 4,500円~
猫・フェレット・ウサギ 2,500円
小鳥、ハムスター、モルモットなどの小動物 1,500円
※すべて外税
犬の画像 猫の画像
   

2次診療

当院は、ホームドクター病院としての診療(1次診療)に加えて、他開業獣医師の先生方からのご紹介やご依頼を受けた上で検査や治療を行う2次診療も行っています。
紹介状等は必ずしも必要とはしませんので、かかりつけ病院がない場合や、かかりつけ病院には内緒でセカンドオピニオンを受けたい場合など、飼い主様が直接ご来院いただくことも可能です。
ここでは、当院の2次診療メニューでご利用いただくことの多い項目について簡単にご説明いたします。

◆CT検査

cT検査 CTとは、X線と検出器とコンピュータを用いて動物の輪切りの断面像を作る装置です。ヒト医療分野だけでなく現代獣医療には不可欠な医療機器のひとつとなりました。 当院は、岐阜県内の民間動物病院としては初となる4列CTスキャナ装置を2009年に導入致しました。2023年には従来の装置の20倍以上の撮影スピード、画像処理能力をもつ 80列160スライスCT装置 に更新をいたしました(岐阜県内動物診療施設としては初)。 従来は、動物のCT撮影には麻酔が必須とされてきましたが、装置の性能向上と 動物専用ポジショナー(谷浦式CTポジショナー、ペットコミュニケーションズ株式会社)の開発によって無麻酔で撮影することも可能となりました。もちろん患者様の状態、性格や撮影部位、撮影方法等によりすべての患者様で無麻酔撮影可能というわけにもいかない現状もありますし、呼吸を止めずに撮影を行うので、麻酔下での検査に比べて診断の精度が落ちる可能性もあります。しかしながら、高齢や疾患により麻酔リスクのある患者様や、どうしても麻酔を避けたいといったご家族のご要望にもできる限りお応えしたいと考えておりますので、スクリーニング検査はもちろん、既知の病変の経過観察や腫瘍の転移確認で毎回麻酔が必要だった患者様にも麻酔の負担なくレントゲン感覚で検査を受けていただけるような体制を目指しております。 本検査は、レントゲン検査や超音波検査では探りにくい部分を可視化したり、病変部位の広がりや他臓器との位置関係を把握するために行います。 他検査では見逃しやすい微細な変化を発見したり、病変部位をわかりやすく観察するために、縦、横、斜めといった任意の断面画像を作成したり、3D画像(立体像)を作成することもあります。 撮影された画像は診断のためのデータとしてだけではなく、生検や手術の際にどのように病変にアプローチするかを検討する重要な情報源となります。 施設案内のページ内、CT室の項に参考画像を掲載してありますのでご覧ください。

CT検査をご希望の方へ
他院様からのご紹介の場合や、飼い主様のお考えでCT検査をご希望される場合、お電話でご予約を受け付けています。 午前中の診療時間中に御来院可能な場合は、当日の検査も可能な場合がありますのでお電話にてお問い合わせください。
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◆再生医療

難治性の疾患を抱えたパートナーとお過ごしの飼い主様へ... 治療法がないとあきらめていませんか?

まだ大切なご家族を救う手だてはあるかもしれません。
日本再生医療学会によれば、再生医療とは「機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を積極的に利用して、その機能の再生をはかるもの」とされています。一言で表すと、「細胞」を使った新たな医療とお考え下さい。細胞を体外で培養し、その細胞を投与することで怪我や病気の治療に役立てる治療になります。
これまで、治療が難しかった病気などに対して、新しい治療法として注目されており、世界中で研究がすすめられています。ヒト医療においては、厚生労働省から先進医療に認定されており、すでに臨床現場で利用が始まっている治療法でもあります。
当院で行っている再生医療のうち、主なものとして幹細胞療法がん免疫細胞療法がございます。ここではその2つを簡単にご説明いたします。
より詳しい情報は提携企業のJ-ARM社のホームページをご覧ください。http://j-arm.biz/

再生医療
再生医療

◇幹細胞療法(ADSC療法、MSC療法)
動物の体には、さまざまな器官や臓器などに変化する(「分化する」といいます)細胞が存在します。この細胞は幹細胞(かんさいぼう)と呼ばれ、幹細胞療法とは、この細胞を体外で培養し、わんちゃんやねこちゃんの体に戻してあげる(移植する)ことで、失われた機能や怪我の再生を期待して行う治療法です。 自身の幹細胞をもとに治療を行う自家移植と、他個体の幹細胞をもとに治療を行う他家移植があります。

<どのような病気に効果があるの?>

骨折・骨折癒合不全 

幹細胞が骨の周囲にある骨膜や、骨細胞、また栄養を運ぶ血管に分化することで、骨折部位を修復します。

脊髄損傷(椎間板ヘルニアや外傷等によるもの) 

幹細胞が血管へ分化して、損傷部位の血流を回復することで、神経細胞の伸長を補助したり、脊髄全体の再形成を補助すると考えられています。

炎症性関節炎 

関節部分の滑膜や軟骨部分が傷ついたりすると炎症を起こし、歩行が困難な関節炎になります。幹細胞を投与することで、関節に新たな軟骨や滑膜を形成させ、痛みをやわらげたり、炎症を回復させることが期待されています。

その他、慢性腎不全、慢性炎症性腸疾患(IBDなど)、乾性角結膜炎(KCS)、膵炎など、様々な疾患での治療報告が増えています。

◇がん免疫細胞療法(CAT療法、DC療法等)
動物には病気や怪我に対して自分で治そうとする免疫力(主役は白血球のリンパ球)という自然治癒力が備わっており、体内にできたがん細胞や体の中に侵入した細菌やウイルスを攻撃して死滅させます。免疫細胞療法は、このような生まれつき備わっている免疫の力を利用したり、免疫の力を強めたりすることで、がんの発症や進行を抑える治療方法です。

がんの治療は、1. 外科手術、2. 化学療法(抗がん剤)、3. 放射線療法の三大療法がこれまで主流を占めてきました。これに継ぐ4の治療法として、がん治療特有の苦痛を伴わず普通の生活を送れるようなQOL(Quality of Life、生活の質)の改善を高める治療法として、免疫細胞療法は世界中で研究され、臨床的な効果が得られる治療法になりました。

<特徴> 
血液に含まれるリンパ球等を体外で培養し、それを再び体内に戻してあげることでがん細胞を攻撃させる治療法です。免疫細胞療法も様々な種類があり研究が進んでいます。

<メリット> 
小さなガンや全身に広がったがんに対する治療効果、切除後のがんの再発予防、副作用がほとんどない、QOLの向上が期待できます。

<デメリット>  
大きな腫瘍を小さくすることは基本的にできません。投与回数にもよりますが、費用が高額になります。

◆泌尿器科

当院は、岐阜県内動物病院としては初となる血液透析装置を2009年に導入し、臨床応用してまいりました。それを機に、泌尿器系の診療に力を入れておりましたが、その後、高機能超音波検査機器の発達、普及や手術デバイスの開発などが背景となり、尿管閉塞の正確な診断やその外科的対応が可能な時代になりました。ここでは、血液透析や尿管閉塞対応手術(尿管ステント設置、SUBシステム設置)について簡単にご説明いたします。

◇血液透析

泌尿器科<

血液透析装置の導入によって、腎不全(尿毒症)、心不全や中毒、免疫疾患等の様々な疾患において、透析治療や除水治療、血漿交換療法等といった治療選択肢が増えました。
これまで救命が難しいとされてきた状態にも対処が可能となり、救命率が向上しました。特に腎不全で点滴(輸液)療法で改善が見込めない場合、有益な武器となります。
透析というと、週に数回、ずっと透析を受け続けなければいけないイメージがあるかと思いますが、動物の場合は少し違います。集中的に入院下で透析をして、その後はなるべく自宅で過ごしてもらおうというのが治療の目標となります。確かに慢性腎不全の場合、いずれまた透析が必要な時はやってくるので、適応するかどうかは飼い主様によって分かれます。動物医療で最も有益性を感じるのは急性腎不全時で、透析治療で腎臓機能の代替をしつつ、同時に他の治療で急性期を乗り切れれば、完全治癒(透析や点滴も含めた全治療が必要なくなる)も可能性があります。

◇尿管ステント設置

尿管ステント設置
尿管ステント設置

何らかの理由で尿管が閉塞、穿孔、断裂等して、腎臓から排泄される尿を膀胱に運ぶことができなくなった場合、尿管の再疎通や再建を目的に尿管内に設置するカテーテルステントです。現状、ねこちゃんサイズだと開腹手術が必要になりますが、中~大型犬では場合によっては開腹せずにX線透視下での設置も考慮します。
適応度合いが一番多いのはねこちゃんの尿管結石閉塞です。次に膀胱腫瘍による尿管閉塞&水腎症、稀に交通事故による尿管断裂もあります。

◇SUBシステム設置

SUBシステム設置
SUBシステム設置
SUBとはSubcutaneous Ureteral Bypassの略で、日本語で皮下尿管バイパスといいます。 腎臓からの尿排泄路を確保するため、腎臓にカテーテルを固定(腎瘻カテーテル)し、そこから尿を導尿します。 膀胱にもカテーテルを固定した後、両カテーテルを皮下組織で連結します。
適応症は尿管ステントとほぼ同じですが、尿管ステントが何らかの理由で適応できない場合、尿管ステントでは短期間での再閉塞が危惧される場合、ハイリスク症例など麻酔時間を少しでも短縮したい場合等に用いるケースが多いです。術後は再閉塞の予防を目的に定期的なバイパスの洗浄を行います。
お問い合わせ・ご相談はお電話でお気軽にご連絡下さい。058-242-0012
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※駐車場完備しております。